- 「亜鉛を摂ると髪の毛が増えるって本当?」
- 「亜鉛を摂ると抜け毛が減るの?」
薄毛予防について調べてみると、摂るべき栄養素などで「亜鉛」を度々見かけることがあることかと思います。
本記事では亜鉛が髪の毛に対してどのような効果があるのか、摂取量が不足するとどういったことが起こるかなど、詳しく解説します。ぜひ、最後までお目通しください。
目次
亜鉛とは
亜鉛とはミネラルの一種。また、ミネラルとは五大栄養素の一種であり、他にはタンパク質・ビタミン・糖質・脂質が挙げられます。
亜鉛は体の多くに分布されており、約60%が筋肉、約20%~30%ほどが骨に含まれています。その役割は多岐にわたり、肌や髪を健康に保ったり、味覚を正常に保ったりと人の生命活動に欠かせない栄養素の一つです。
牡蠣や肉類、魚などの動物性食品に多く含まれますが、含有量の多い食べ物は限られるため、意識的に摂らないと不足しがちな栄養素でもあります。実際に1982年のアメリカの研究によると、アメリカ人の1%~3%に亜鉛欠乏症が見られるということが分かりました。
亜鉛が髪に与える影響
亜鉛が髪に与える影響としては、大きく取り上げると以下の2つが挙げられます。
- 髪の毛の材料となるタンパク質「ケラチン」の合成
- AGA(男性型脱毛症)の引き金となる還元酵素5αリダクターゼの抑制
それぞれ詳しく解説していきます。
髪の毛の材料となるタンパク質「ケラチン」の合成
髪の毛の80%~90%はケラチンと呼ばれるタンパク質によって作られています。ケラチンは食べ物から直接摂取することはできず、体内に取り込んだタンパク質を分解してアミノ酸にした後、それらが再結合して作られます。
亜鉛はケラチンの合成の際に必要な栄養素であり、いくらタンパク質を摂取しても亜鉛が不足している状態では十分にケラチンが作られず、髪の毛の成長に影響を与えてしまいます。
そのため、タンパク質を積極的に摂るようにしたにも関わらず、髪に変化が起きない場合は亜鉛が不足しているとも考えられるでしょう。
AGA(男性型脱毛症)の引き金となる還元酵素5αリダクターゼの抑制
AGAはジヒドロテストステロンと呼ばれる男性ホルモンが、アンドロゲンレセプターと呼ばれる受容体と結合して生まれる脱毛因子「TGF-β」によって薄毛が引き起こされる病気です。
ジヒドロテストステロンはそもそも男性ホルモンの一種「テストステロン」と還元酵素である5αリダクターゼが結合することによって生まれる男性ホルモン。そのため、5αリダクターゼの活動を抑制することができれば、AGAの進行を阻害できます。
意外なことに亜鉛には5αリダクターゼを抑制する効果があり、AGAの症状に対しても効果的に働くと言えます。
亜鉛が不足すると起きること
髪の毛に限らず、生命活動において様々な役割を果たす亜鉛。身体の多くの箇所に分布していることから、亜鉛が不足してしまうと、多くの影響を及ぼします。
亜鉛が不足した際、以下のような症状が体に見られます。
- 皮膚炎が起きやすくなる
- 味覚障害
- 抜け毛の増加
- 貧血
- 骨粗しょう症
- 生殖機能不全
それぞれ詳しく解説していきます。
皮膚炎が起きやすくなる
亜鉛は髪の毛に限らず、さまざまなタンパク質の合成に関係しており、当然皮膚も含まれます。亜鉛が不足すると皮膚の健康状態が正常に保てなくなり、紫外線や摩擦などの外的刺激によって炎症が起きてしまいやすくなるのです。
味覚障害
舌には味を感じるための「味細胞(みさいぼう)」と呼ばれる細胞があり、この細胞から味覚神経を通じて脳に情報が送られます。
味細胞は一定の周期で絶えず生まれ変わっており、この代謝に亜鉛が必要となるのです。そのため、亜鉛が不足してしまうと味細胞が十分に生まれず、味覚障害を引き起こしてしまいます。
抜け毛の増加
先にも解説させていただいた通り、髪の毛の成長には亜鉛がかかせません。亜鉛が不足すると、髪の毛の基となるケラチンが十分に合成されなくなってしまい、髪の成長時期に十分に成長することができず、抜け毛が増えてしまいます。
また、同時に皮膚も弱くなってしまうことから、頭皮環境が悪化しやすくなり、そういった点からも抜け毛の増加が懸念されるでしょう。
貧血
亜鉛は血に含まれる赤血球を作る働きもあり、亜鉛が不足することで赤血球の増殖不良や赤血球の脆弱化が引き起こされ、貧血を招くことがあります。
骨粗しょう症
冒頭でも解説させて頂いた通り、体内にある亜鉛の約20%~30%ほどは骨に含まれており、骨を作るにあたって亜鉛は欠かせない成分です。
亜鉛が不足することで、骨量が低下し骨が弱くなり、骨折しやすくなる「骨粗しょう症」を招くこともあります。
生殖機能不全
男性の場合、亜鉛が不足すると精子や男性ホルモンをつくる器官である「性腺」に発達障害や機能不全の症状が見られ、精子量の減少や性欲減退などの症状が見られるようになります。
また、女性も同じように生殖器官が正常に働かなくなり、健康的な卵子が作られなくなってしまったり、ホルモンバランスの乱れなども見られるようになります。
亜鉛の摂取目安量
亜鉛の摂取目安量は性別と年齢によって異なります。詳しくは以下の通りです。
男性における亜鉛の摂取目安量(mg/日)
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5(月) | - | - | 2 | - |
6~11(月) | - | - | 3 | - |
1~2(歳) | 3 | 3 | - | - |
3~5(歳) | 3 | 4 | - | - |
6~7(歳) | 4 | 5 | - | - |
8~9(歳) | 5 | 6 | - | - |
10~11(歳) | 6 | 7 | - | - |
12~14(歳) | 9 | 10 | - | - |
15~17(歳) | 10 | 12 | - | - |
18~29(歳) | 9 | 11 | - | 40 |
30~49(歳) | 9 | 11 | - | 45 |
50~64(歳) | 9 | 11 | - | 45 |
65~74(歳) | 9 | 11 | - | 40 |
75以上(歳) | 9 | 10 | - | 40 |
女性における亜鉛の摂取目安量(mg/日)
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5(月) | - | - | 2 | - |
6~11(月) | - | - | 3 | - |
1~2(歳) | 2 | 3 | - | - |
3~5(歳) | 3 | 3 | - | - |
6~7(歳) | 3 | 4 | - | - |
8~9(歳) | 4 | 5 | - | - |
10~11(歳) | 5 | 6 | - | - |
12~14(歳) | 7 | 8 | - | - |
15~17(歳) | 7 | 8 | - | - |
18~29(歳) | 7 | 8 | - | 35 |
30~49(歳) | 7 | 8 | - | 35 |
50~64(歳) | 7 | 8 | - | 35 |
65~74(歳) | 7 | 8 | - | 35 |
75以上(歳) | 6 | 8 | - | 30 |
妊婦(付加量) | 1 | 2 | - | - |
授乳婦(付加量) | 3 | 4 | - | - |
亜鉛が摂れる食材
亜鉛が多く摂れる食材としては、以下が挙げられます。
食べ物 | 可食部100g辺りの成分量 |
---|---|
かき(養殖・生) | 14.5g |
ごまさば | 8.4g |
かたくちいわし(田作り) | 7.9g |
牛肉(ひき肉) | 7.6g |
いりごま | 5.9g |
日常生活の中で亜鉛の摂取が難しいという場合には、サプリメントなどを活用して亜鉛を補給すると良いでしょう。
亜鉛に関するよくある質問
最後は亜鉛に関するよくある質問について解説いたします。
Q. 亜鉛を摂りすぎると逆に髪の毛が減るというのは本当ですか?
亜鉛を摂りすぎることで抜け毛が増えるといった症状は見られていません。
しかし、耐用上限量を超えた亜鉛の摂取を続けていると、悪心や嘔吐、食欲不振などの他、同じミネラルである鉄や銅の吸収を阻害してしまうこともあります。
必ず耐用上限量を守って、亜鉛を摂取するようにしましょう。
Q. 亜鉛を摂れば髪の毛はサラサラになりますか?
既に生えている髪の毛については、細胞の活動が終了しているため、いくら栄養を摂取しても髪質が変化するといったことは見られません。
しかし、亜鉛を摂取することで、これから生えてくる髪の毛については不足している時と比べて、髪質の改善が期待できるでしょう。
まとめ
今回は亜鉛と髪の関係について解説いたしました。本記事で重要なポイントは以下の4つです。
- 亜鉛は髪の毛の基となるケラチンの合成にかかせない成分
- 亜鉛を摂ることでAGAの原因である5αリダクターゼの活動を抑制することができる
- 髪の毛以外にも生命活動において亜鉛は必須の成分
- 亜鉛を摂りすぎることで悪心や吐き気などの症状を引き起こす可能性がある